田母神航空幕僚長が(よりにもよって)アパグループの懸賞論文に応募していたことがわかり、その内容があまりにもドイヒ〜なので役職を更迭されたという、「何でまたこの時期に」というニュース。
自衛隊の幹部ってまだそんなことに拘泥してんの? というのが第一印象。日本軍がアジア諸国に軍事力を展開して、戦闘行為を行ったという事実が「侵略」なのか「欧米支配からの民族解放」を目的としたものなのかは、コインの裏表どちらを見るのかと同じで、立場によって評価が変わるのは当然のことだ。田母神は論文の中で侵略説を否定したので、騒ぎになった。政府にとって、外交上ネガティブな要素になることが明らかだったからだ。
現在の世界状況を考察すれば、今時「日本軍がアジアを侵略したのかどうか」などという議論をしている場合ではない。良識ある世論は、ブッシュ政権による対イラク戦略の失敗が確実視され「パクス・アメリカーナ」体制が崩壊した後、世界の安全保障をどのように確保すべきか模索している最中なのだ。先端の議論は常に「今とその先」にあり、80年も前のことを回顧しているヒマなどない。
だが、問題なのは「侵略云々」の箇所ではなく、実はその後に書かれている結論の部分だ。
論文(http://www.apa.co.jp/book_report/images/2008jyusyou_saiyuusyu.pdf)を読んでみると、田母神が言いたいことは「日本の自衛力をもっと強化せよ」ということなのだ。アメリカへの依存関係を解消し、日本を真の独立国にしたい、というのが本論文の結論なのだ。その結論を導くために、過去の日本軍のアジアに於ける軍事行為は「侵略」ではなかった、さらに、日米開戦はアメリカによる謀略であり、仕方なく日本は開戦に踏み切った、という前置きを書き連ねている。
田母神が論文で表わしたかったことを単純化すると、「日本を真の独立国にしたい→そのためには日本の軍事力を強化しなければならない→独自の軍隊を持つ独立国になっても他国を侵略したりしないからね→だって、先の戦争でだって本当は侵略なんてしてないんだから」ということになる。
大部分の国民は日本を独立国だと思っているだろうが、実はそうではないというのは真実だ。それ以外にもアメリカが日本に対して様々なマインドコントロール(という言葉は田母神論文にも出てくる)を行っているのも事実だ。
自衛隊自体もその一部だ。自衛隊は日本国民の安全を確保するために存在しているわけではない。自衛隊は日本にいる在日アメリカ軍人とその家族を守るために存在しているのだ。同じように在日アメリカ軍は日本を防衛するために存在しているわけではない(まあ、これはみんなわかっていると思うけど)。
日本を本当の独立国にしたいという思いは、僕も同感である。しかし、そのために軍備増強が必要という主張は現役自衛隊組織の人間がするべきではない。それは単なる組織防衛だ。「兵力を持たない独立国」という選択だってあってよいのだ。
百歩譲って、田母神論文の前置き部分が真実だとしても、結果的に日本軍が軍事行為を起こしたことは事実であり、ヘタに軍隊を持つ独立国になったら、再び日本が戦争に巻き込まれる可能性だって否定できないではないか。
それにしても、各メディアや政府関係者が論文の「侵略」の部分だけにスポットライトを当てて、より重要な結論についてはほとんど言及していないことが気になる。意図的な隠蔽工作の匂いがする。問題の本質に触れてしまうと、自民党が深層で常に抱いてきた国體的指向や対アジア戦略が露呈してしまう可能性があるからだと僕は思う。もしそれが暴かれたら、現政権の体力では対応できないほどの国際的なバッシングを受けることは必至だからだ。
僕たち日本人はかなり「ややこしい」国に住んでいるのだが、その「ややこしさ」がどれほどのものかは、ぜひ各自で勉強していただきたい。
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